AIの「嘘」と人間の「曖昧さ」 〜完璧を求めない経営論〜

社長の着想日誌

最新AIでも、同じ絵は二度と描けない

最近のAIの進化は目覚ましいものがあります。特に画像を作るAIなどは、まるで写真のようなリアルな絵を一瞬で描いてくれます。 しかし、そんな高性能なAIにも、変わらない「癖」のようなものがあります。

それは、「全く同じものを、もう一度出すことは難しい」という点です。

「さっきのあの画像の、ここだけ直して」 そう指示しても、AIは全体の構図を微妙に変えてしまったり、タッチを変えてしまったりする。 デジタルツールなのに、コピー&ペーストのように完璧な再現性がない。 これを「不便だ」と感じる人も多いでしょう。

しかし私は、この「揺らぎ」こそが、AIの本質であり、人間と付き合う上でのヒントになるのではないかと思うのです。

「通勤」という言葉の解像度

例えば、あなたがAIに「通勤の風景を描いて」と指示したとします。

この「通勤」というたった二文字の言葉。 ある人にとっては「満員電車の疲労感」かもしれません。 しかし、ある人にとっては「愛車で好きな音楽を聴くドライブ」かもしれません。

人間同士でも、これだけの解釈のズレ(行間)があります。 AIも同じです。膨大なデータの中から、その時々の「思考」によって、「通勤」という言葉をどう映像化するか悩み、選択しています。

だからこそ、同じ指示をしても、二度と同じ絵は出てきません。 それはAIが適当にやっているのではなく、私たちの言葉(プロンプト)に含まれる無限の可能性(曖昧さ)を、AIなりに必死に解釈しようとした結果なのです。

再現性の低さは、人間らしさの表れ

従来のコンピューターは「0か1か」の世界でした。Aと入力すれば必ずBが返ってくる。それが正義でした。 しかし、生成AIは違います。

「同じ絵をもう一回描いて」と言われても、全く同じ線は引けない。 これは、人間に非常に似ていませんか?

私たち人間も、昨日と今日で言うことが微妙に変わります。気分や体調、その場の空気によって、アウトプットが変わる。 AIの再現性の低さ、揺らぎ。それは「使いにくさ」であると同時に、ある種の「人間臭さ」でもあります。

これを「欠陥」と捉えてイライラするか、「味」や「可能性」と捉えて楽しめるか。 ここで、経営者としての器が試されます。

完璧を求めない勇気

AIが出してきた答えが、自分のイメージと違ったとき。 「ハルシネーション(幻覚)だ」「間違いだ」とAIを責めるのは簡単です。

しかし、一度立ち止まって考えてみてください。 「私の指示の出し方(言葉)が、誤解を招くものだったのではないか?」 「AIは、私の言葉の『行間』を、別の角度から読み取ったのではないか?」

そう捉え直すことで、AIとの対話は「デバッグ作業」から「コミュニケーション」へと変わります。

「そうじゃない、僕が言いたかったのはこういうことなんだ」 「あ、そういう解釈もあるのか。面白いね」

そんな風に、対話を重ね、修正し合い、お互いの認識のズレを埋めていく作業。 それはまさに、部下の育成や、人間同士の信頼関係構築そのものです。

AIはまだ成長途中です。そして、言葉で物事を的確に伝える私たち人間もまた、成長の余地があります。 完璧ではないAIを飼いならし、その「揺らぎ」さえも愛おしく思う。

そんな「大きな心」でAIと付き合える経営者こそが、これからのDX時代を勝ち抜いていくのだと、私は確信しています。

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