前編では、「国策」と「人道(雇用)」の視点から、M&Aによる店舗集約が避けられない未来であることを解説した。 後編となる今回は、私たち現場のオーナーにとっての**「公平性」と、経営者としての「夢」**の話をしよう。
なぜ私が、M&Aの導入、それも**「入札(オークション)制度」**にこだわるのか。 それは、現在の店舗紹介のプロセスがあまりにも不透明で、理不尽だからだ。
1. 「誰が決めたか分からない」密室政治の闇
現在、複数店経営(2号店以降)の話は、どのように決まるかご存知だろうか。 はっきり言って、**「行き当たりばったり」であり、「密室政治」**そのものだ。
ある日突然、本部から電話がかかってくる。「あそこが空くからどう?」と。 その基準は何か? 「経営能力が高いから」ではない。多くの場合、 「本部に従順だから」 「たまたまタイミングが合ったから」 といった、極めて属人的で曖昧な理由で決まる。
一方で、真面目に準備していたオーナーに話が来ず、何も考えていないオーナーに棚ぼたで店が転がり込むことさえある。 こんな**「運ゲー」**に、人生と経営計画を委ねてはいけない。
2. チャーチルは言った。「他を除けば一番マシ」だと
だから私は提案する。 コソコソとした密室での割り当てをやめろ。 **「入札(オークション)」**で堂々と決めろ、と。
「金(入札)で決めるなんて、冷たすぎる」と言う人がいるかもしれない。 だが、ここでかつてのイギリス首相、ウィンストン・チャーチルの名言を引用したい。
「民主主義は最悪の政治形態と言える。これまで試みられてきた、他のすべての政治形態を除けば。」
この言葉の本質は、「完璧なシステムなど存在しない」というリアリズムだ。 これをコンビニ経営に置き換えてみよう。
「金(資本力)」で権利を決めるのは、確かに冷徹に見える。ある意味では「最悪」かもしれない。 だが、「本部の担当者の好き嫌いで決まるシステム」や「運と縁だけで決まるシステム」に比べれば、遥かにマシで、遥かに公平ではないか?
「この店をやりたい」と手を挙げ、資金を用意し(=信用がある証)、一番高い値をつけた人間が権利を得る。 そこには忖度も癒着もない。あるのは**「経営への覚悟」**だけだ。
3. PLを磨けば、それは「資産」になる
そして、この仕組みが導入されれば、私たちの働き方は劇的に変わる。 PL(損益計算書)の最終利益は、「今月の生活費」ではなく、**「店の売却価格(資産価値)」**に変わるからだ。
例えば、「直近利益の3年分」が売値の基準になるとしよう。 あなたが経営努力をして、月の利益を20万円増やしたとする。 年間で240万円の増益だ。 だが、売却時にはその3倍、「720万円」も高く売れることになる。
日々のコスト削減、売上アップの努力が、将来の「退職金」としてダイレクトに跳ね返ってくる。 「終わり(出口)」が見えるからこそ、人は今日を頑張れるのだ。
4. 「一代限りの権利」が招く、従業員への裏切り
最後に、もう一つ重要な視点を付け加えたい。 今のシステムには**「人道的に許されない欠陥」がある。 それは、どれだけ店舗を拡大し、組織を大きくしても、「契約はオーナー個人の一代限り」**という残酷なルールだ。
想像してほしい。 拡大意欲のあるオーナーの元で、「この会社で幹部になるんだ」と夢見てついてきた店長たちのことを。 彼らは人生を捧げ、会社の成長を支えてきた。
しかし、オーナーが引退を決めた時、何が起きるか。 今の個人契約のままでは、オーナーの引退と共に、法人としての運営権も消滅する。 オーナーは、信じてついてきた部下にこう言わなければならない。
「すまない。私が辞めるから、君たちのキャリアもここまでだ。この会社にはもう、何の権利も残らないんだ」
これは「裏切り」だ。 オーナー個人がいかに誠実であろうとしても、システムがそうさせてしまうのだ。
だからこそ、M&Aで「法人(組織)」ごと運営権を引き継げる仕組みが必要なのだ。 新しいオーナーが株主となり、会社が存続すれば、従業員のキャリアも、役職も、給与も守られる。
「俺が辞めたら終わり」の無責任な個人商店で終わるか。 「俺が辞めても、君たちの価値は守られる」という強い組織を残すか。 M&Aは、私たちオーナーが従業員に対して「最後の責任」を果たすための手段でもあるのだ。
「データはAI、決断は社長。」 さあ、あなたの店のPLを見直してほしい。 その数字は今、いくらの値がつくだろうか?
(完)
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