1. 「AI発注」という名前の“優良誤認”
世の中は空前のAIブームです。「AIがあなたの仕事を助けます」「AIが最適な発注を提案します」。 セブン-イレブン本部も、高らかに**「AI発注」**を謳っています。特に雑貨や菓子などの「非デイリー商品」に関しては、約2年前からこのシステムが導入されました。
これを聞いて、一般のお客様や、これからオーナーになろうとする人はどう思うでしょうか? 「さすがセブンだ。全国2万店のビッグデータを解析し、明日の天気、近隣の運動会イベント、客層の性別・年代まで考慮して、『明日はこれが売れる!』と予言してくれるんだな」
そう思うでしょう。残念ながら、それは大きな誤解です。
2. 実態は「減ったら足す」だけのプログラム
現場で毎日この画面を見ている私だから断言します。 あれは、皆様が想像するような高度なAIではありません。
実態は、単なる**「プログラム発注(在庫補充ロジック)」**です。
仕組みは驚くほど単純です。 本部側であらかじめ商品に「売れるランク(甲乙丙のようなランク付け)」を決めます。そして、「ランクAの商品は、在庫が2個になったら、1ロット(1箱)発注する」というルールを組んでいるだけです。
在庫が減る。閾値(しきいち)またぐ。発注がかかる。 これだけです。
ここに、「明日は大雪だから売れないぞ」とか、「明日は近くで花火大会があるぞ」といった、商売人なら当然加味すべき「ライブ感のある変数」は、ほとんど考慮されていません。
3. 「ガンガンいこうぜ」で全滅する気か?
私はこのシステムを見るたびに、中学時代に熱中したファミコンゲーム『ドラゴンクエストIV』を思い出します。 あれは今から約35年前、1990年のゲームです。当時画期的だったのが「AI戦闘」でした。
「ガンガンいこうぜ」 「いのちだいじに」 「じゅもんつかうな」
プレイヤーが作戦(モード)を決めると、キャラクターが勝手に動く。 しかし、当時のAIはアホでした。効きもしないのに即死呪文(ザラキ)を連発したり、ボス戦なのにMPを温存したり。
今のセブン-イレブンの「AI発注」は、まさにこのレベルです。 本部が「ガンガンいこうぜ(売上重視)」と設定すれば、現場の在庫が山積みだろうが、廃棄が出そうだろうが、お構いなしに「納品しろ」と提案してきます。
40年前のゲームのロジックを、令和の最新店舗に持ち込み、「これで現場が楽になりました」とドヤ顔をする。 これを「おこがましい」と言わずして何と言うのでしょうか。
4. 「思考停止」が一番の廃棄ロス
もちろん、定番商品が切れないようにする「補充」の役割としては、一定の評価はできます。 しかし、一番怖いのは、オーナーや従業員がこの「ニセモノのAI」を信じ込み、「機械が言ってるんだから正しいだろう」と思考停止に陥ることです。
機械は責任を取りません。 「AIの通りに発注したら、雪に埋もれて大量廃棄が出ました」 そう言っても、本部は1円も補填してくれません。
発注とは、未来への投資であり、**「賭け」**です。 「明日は寒いから、肉まんをいつもの倍入れよう」 「この新商品はテレビでやるから、勝負しよう」
そのヒリヒリするような決断(ギャンブル)こそが商売の醍醐味であり、利益の源泉です。 「減ったら足す」だけの行為なら、それは**「商売」ではなく、ただの「作業」**に過ぎません。
5. 結論:AIは「自衛」のために使え
本部のAIは「売上(本部の取り分)」を最大化するために作られています。 だからこそ、私たち加盟店は**「利益(自分の生活)」を守るための、独自のAI(判断基準)**を持たなければなりません。
「本部のAIはこう言ってるが、俺のデータ(直感と経験)では違う」 そう言って、提案された数字を「キャンセル」する勇気。 それこそが、現代のオーナーに求められる**「自衛権の行使」**です。
「データはAI、決断は社長。」 そのデータが「本物」か見極め、決断するのは、いつだって社長であるあなたの仕事です。


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