私は25年間、現場で泥水をすすってきた。 その中で確信したことがある。この業界を蝕んでいる真の病巣は、強欲な本部でもなければ、クレーマーでもない。 「自分には関係ない」「波風を立てたくない」とバックヤードで息を潜める、我々「善人」であるオーナーたちの沈黙だ。
歴史を見れば明らかだ。エドマンド・バーク、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア、そしてマルティン・ニーメラー。 この3人の言葉を繋ぎ合わせると、今の我々が置かれている危機的状況が、まるで予言書のように浮かび上がってくる。
1. エドマンド・バークの警告:【悪の正体】
18世紀の政治思想家、エドマンド・バークはこう言った。
「悪が勝利するために必要なことは、ただ一つ。善良な人たちが、何もしないことである」
コンビニ業界における「悪」とは何か。それは特定の誰かではない。「システムの腐敗」だ。 ドミナントによる共食い、廃棄ロスの押し付け、24時間営業の強制。 これらがまかり通ってしまったのは、本部が悪魔だからではない。 それが始まった時、「善良な」我々オーナーが、「何もしなかった」からだ。 「波風を立てるな」という事なかれ主義が、この歪んだシステムを「正解」として定着させてしまったのだ。
2. キング牧師の告発:【沈黙という罪】
「私は本部のルールを守っている。優良な加盟店だ」 そう胸を張るあなたに、キング牧師のこの言葉を突きつけたい。
「この社会移行期における最大の悲劇は、悪人の暴力的な言葉ではなく、善人の恐るべき沈黙である」
彼は、「悪人(理不尽な本部)」よりも、「沈黙する善人(従順なオーナー)」の方が罪深いと断じたのだ。 なぜか? 悪人は自覚して悪を行うが、沈黙する善人は「自分は潔白だ」と信じ込んだまま、悪に加担するからだ。 隣の店が潰れそうな時、あなたが「関係ない」と目を逸らしたその瞬間、あなたは本部の理不尽な施策に対する**「承認者(イエスマン)」**になったのだ。
3. ニーメラーの予言:【訪れる罰】
そして、沈黙を続けた「善人」に最後に訪れる結末。 それをあまりにも残酷に描いたのが、マルティン・ニーメラーの詩だ。これは一文字たりとも読み飛ばしてはいけない。
「ナチスが最初、共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は共産主義者ではなかったから。
続いて彼らが社会民主主義者を投獄したとき、私は声をあげなかった。私は社会民主主義者ではなかったから。
続いて彼らが労働組合員を攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は労働組合員ではなかったから。
続いて彼らがユダヤ人を攻撃したとき、私は声をあげなかった。私はユダヤ人ではなかったから。
そして、彼らが私を攻撃したとき、私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった。」
これを読んで、背筋が凍らないオーナーがいるだろうか?
「売上の低い店がドミナントされた時、俺は黙っていた。俺の店は売れていたから」 「深夜営業で揉めた店が契約解除された時、俺は黙っていた。俺は人を確保できていたから」
そうやって仲間を見捨ててきた結果、今、人手不足と物流コスト増という「死神」が、あなたの店に迫っている。 助けを求めても、もう遅い。あなたの周りには、共に声を上げてくれる仲間は一人も残っていないのだ。
誇り高き「プロ」として、沈黙を破れ
誤解しないでほしい。私は「反本部」ではない。 セブン-イレブンという看板を愛し、誇りを持っているからこそ、その看板が「搾取の象徴」に成り下がるのが許せないのだ。
バークが警告し、キングが断罪し、ニーメラーが予言した破滅の道。 そこから引き返す方法はたった一つ。 「おかしいことはおかしい」と声を上げ、対等なビジネスパートナーとしての地位を取り戻すことだ。
沈黙は美徳ではない。現場放棄だ。 「データはAI、決断は社長。」 自分の店と、未来の自分を守るために。今こそバックヤードから出て、声を上げろ。
コメント